テレビをつける。
またワールドカップ。
どのチャンネルもワールドカップ。
「日本中が熱狂!」
「寝不足覚悟!」
「みんなで応援しよう!」
知らねぇよ。
こっちは寝不足なんじゃない。
借金で眠れないんだ。
40歳。
借金2,000万円。
実家暮らし。
父親は寝たきり。
母親は70歳を過ぎても最低賃金のパート。
そんな人間に「日本代表を応援しよう!」なんて言われても困る。
応援する余裕なんてない。
今日を生きるだけで精一杯なんだから。
ゴールが決まった?
だから何だ。
優勝した?
それで僕の借金は減るのか。
生活は楽になるのか。
誰かが僕を助けてくれるのか。
何も変わらない。
SNSを開けば、みんな楽しそうだ。
「最高!」
「感動した!」
「泣いた!」
よかったですね。
僕は督促状を見て泣きそうです。
そんな投稿を見ていると、自分でも嫌になるくらい心が汚れていく。
「負けろ。」
「どうでもいい。」
そんなことを思ってしまう。
昔の僕なら、サッカーを見て一緒に盛り上がっていたかもしれない。
でも今は違う。
人の幸せが腹立たしい。
楽しそうに笑っている人を見ると、イライラする。
最低だと思う。
性格が腐ってる。
でも、借金を抱えて毎日追い詰められると、人間はこんなふうになる。
心まで貧乏になる。
嫉妬して。
ひねくれて。
誰かの幸せを素直に喜べなくなる。
ワールドカップが悪いんじゃない。
楽しんでいる人が悪いわけでもない。
悪いのは、こんな心になってしまった僕だ。
でも、それでも思ってしまう。
「いいよな、お前らは。」
サッカーを見て笑える人生で。
僕は今夜もテレビを消す。
歓声なんて聞きたくない。
静かな部屋で、借金の返済額を見つめながら、「明日はどうしよう」と考える。
それが今の僕の日常だ。

